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最高裁判所第一小法廷 昭和58年(行ツ)32号 判決 1983年12月01日

上告人

虎姫町選挙管理委員会

右代表者委員長

林太樹

右訴訟代理人

石原即昭

宮川清

中川幸雄

被上告人

川越金一

被上告人

両輪紀久夫

右両名訴訟代理人

吉原稔

木村靖

野村裕

小川恭子

被上告人

川越きみゑ

被上告人

川越九洲男

被上告人

秦新市

被上告人

川越信造

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人石原即昭、同宮川清、同中川幸雄の上告理由第一について

所論の点に関する原審の認定判断及び措置は、原判決挙示の証拠関係及び記録に表れた本件訴訟の経過に照らし、是認しえないではない。論旨は、採用することができない。

同第二の一、二の1及び2並びに三について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らして是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。

同第二の二の3について

公職選挙法二一条一項は、選挙人名簿の被登録資格の一要件として、他の市町村から当該市町村の区域内に住所を移した者で転入の届出をしたものについては、当該届出をした日から引き続き三か月以上当該市町村の住民基本台帳に記録されていることを掲げているが、右にいう被登録資格を生じさせるための住民基本台帳の記録は、記録された者が実際に当該市町村の住民であるという事実に基づいた正当なものであることが必要であり、したがつて、転入の届出をして引き続き三か月以上当該市町村の住民基本台帳に記録されている者であつても、現実に当該市町村の区域内に住所を移して引き続き三か月以上右区域内に住所を有していなかつたときは、当該市町村の選挙人名簿の被登録資格を取得しないものと解するのが相当である。論旨は、これと異なる独自の見解に立つて原審の判断の不当をいうものであつて、採用することができない。

同第二の二の4について

所論は、ひつきよう、原審において主張しなかつた事由に基づいて原判決の不当をいうに帰するものであるのみならず、公職選挙法二一条一項所定の選挙人名簿の被登録資格は、登録の際に存することが必要であり、登録の際に現に被登録資格を有しなかつた者は、選挙人名簿から抹消しなければならないのであつて(同法二八条三号)、登録の際に引き続き三か月以上当該市町村の区域内に住所を有していなかつたにもかかわらず登録を受けた者が、その後の時点において引き続き三か月以上右区域内に住所を有するに至つたとしても、そのために当初の登録の瑕疵が治癒せられ、登録が有効になるものと解することはできない。論旨は、採用することができない。

よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、八五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(中村治朗 藤﨑萬里 谷口正孝 和田誠一)

上告代理人石原即昭、同宮川清、同中川幸雄の上告理由

第一、<省略>

第二、原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違背、もしくは事実を誤認し法令の適用を誤つた違法がある。

一、<省略>

二、1 原判決は、137杉野重樹138杉野元子について、昭和五七年九月ころ以降に虎姫町の区域内に住所を有することは認められるが、被登録資格のうち住所要件についても昭和五六年八月二八日以前から虎姫町内に住所を有していなければならないところ、本件全証拠によるもその始期を明らかにすることができないから、右両名はいずれも被登録資格を欠いたものであるとして上告人の決定を取り消した。

2 たしかに証人杉野元子は、虎姫町に帰つて来たのは昭和五六年九月ころともうけとれる証言を一部でなしているが、これは尋問の冒頭で転入の時期について漠然と述べたものであり、その証言を総合して考察すると、右両名は転入届出と同時に転居したものと認めることができるばかりか、裁判長の

実際に住んでいないんですか、八月当時

との質問に対し、

その間はいつしよに住んでましたんや

トタン工事してもろうたものでと答えており、杉野重樹・杉野元子が八月当時すでに虎姫町に居住していたことが明らかである。この点において原判決の認定は、経験則違反により、重大な事実誤認を犯しており、これが判決に影響を及ぼすことは明らかである。

3 仮に原判決認定のとおりであつたとしても法二一条一項にいう、いわゆる被登録資格の要件は

(1) 当該市町村の区域内に住所を有すること

(2) 引き続き三か月以上、当該市町村の住民基本台帳に記録されていること

の二つである。

そして右(1)の要件は法文上からも、登録の時点において住所を有することのみで足りると解される。

公職選挙法施行令一〇条一項は、被登録資格を有することについて確認が得られない者を選挙人名簿に登録してはならない旨規定するのであるが、ここにいう被登録資格はもとより公職選挙法二一条一項と同じ内容のものであるから、選挙管理委員会としては登録の時点において当該市町村に住所を有していること及び引き続き三か月以上住民基本台帳に記録されていることを確認すればこれのみで必要にしてかつ十分であるといえるのである。

これを本件に即していえば、杉野重樹・杉野元子の両名は、登録時虎姫町の区域内に住所を有していたこと及び引き続き三か月以上住民基本台帳に記載されていることは原判決もこれを認定しているところでその立証は十分であり、上告人の決定は正当である。

4 仮に右登録時において、右両名が被登録資格を有していなかつたとしても、右両名はその後も引き続き居住しており、従つて虎姫町に住所を有するに至つて後三か月経過した時点で被登録資格を有するに至つたのであるから、上告人の決定を取り消す訴の利益は失われており、被上告人の訴は却下ないし棄却さるべきものである。

5 右のように杉野重樹・杉野元子につき、上告人の決定を取り消した原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認、もしくは法令の解釈適用を誤つた違法があるというべきである。

三、<省略>

以上の次第で、原判決の上告人敗訴部分は違法不当であるから、これを破棄されたうえ、さらに相当な裁判を求める。

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